世界の高血圧症の数は過去30年間に倍増。しかも半数は治療をしていないという。世界保健機関の調査から。
同調査は、世界184カ国と地域で30~79歳の1億0400万人が参加した集団調査の統合解析で、収縮期血圧(上の血圧)140mmHg以上、拡張期血圧(下の血圧)90mmHg以上、または血圧を下げる薬を服用しているケースを「高血圧症」と定義し、有病率と治療率を調べた。
その結果、人口の増加と高齢化の影響で、世界の高血圧患者は過去30年間で倍増していることが判明。日本など高所得国の有病率が大きく減少、あるいは横ばいに推移した一方、低・中所得国では有病率が上昇し、世界の患者数の8割にあたる10億人以上を低・中所得国の住民が占めた。
日本では過去30年の間に女性の有病率が36%から22%へと大きく減少。改善ランキングでも3位につけた。一方、男性は44%から40%と小幅な改善にとどまった。
ちなみに2019年の「低」有病率ランキングでは、女性が7位、男性は129位だった。
問題は、19年時点の治療率が男女共におよそ半数――女性51%、男性46%にとどまっていること。
30年前の女性31%。男性23%よりはよほど改善されているが、医療アクセスに恵まれた国としては不本意な結果になった。
確かに高血圧症の早期は自覚症状がないので、治療意欲がわきにくい。意識を変えるにはまず、家庭血圧の数値で「目に見える疾患」にしてしまおう。
家庭血圧で高血圧症と診断されるのは、5~7日間の平均値で135/85mmHgをどちらか一方でも超えた場合だ。
測定は腕にカフを巻くタイプの血圧計で(1)椅子に座り、カフの高さと心臓の高さを合わせる、(2)測定前に1、2分間安静にしてから測る、の2点がポイント。朝と夜の1日2回の値を記録し、その平均値を1日の血圧値とする。
国内の調査でも30代男性の5人に1人、40代で3人に1人は高血圧症であることが判明している。30代の声を聞いたら家庭での血圧測定を習慣にしていこう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)