臨時総会開催の邪魔をする理事会に
対抗する手段とは?

 反対に、理事会の立場で考えてみよう。理事長が確実に議長を務めたいのであれば、組合員による5分の1の同意が集まる前に理事会での決議を経て、理事長が臨時総会を招集する、という方法もある。

 前述したように、組合員の立場で5分の1の同意を集めたり、議決権総数の半数以上の総会出席を確実にしたりするには時間がかかる。しかも、理事長や理事も組合員であり、臨時総会の目的の説明や同意を集める書類が手元に届くため、組合員による総会招集の動きがあることは当然認識できる。そこで、自分たちに不利な議案で臨時総会が開催されないように、先手を打って理事会主導の臨時総会を開催するわけだ。

 5分の1側の組合員にしてみれば、臨時総会を実現させるスピードは、どうしても理事会にはかなわない。そこで、それに対抗する手段として、Bの監事を味方に付ける方法もある。監事ならば、単独で臨時総会を招集することができるからだ。そうしたテクニックを駆使することも視野に入れつつ、常にマンション内の人間関係や役員の人材配置などをウオッチしておくことが大切だ。

 決議についてはもう1点、付け加えておきたい。国土交通省による「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(平成27年3月)において、管理組合の役員による利益相反取引を防止する観点から、「理事会の決議に特別の利害関係を有する理事は、その議決に加わることができない」という規定が設けられた。

 しかし、上記はあくまでも「理事会の決議」についてのもので、総会にはそうした規定はない。つまり、特別の利害関係を有する理事(理事長)も、総会の決議に加わることができるのだ。理事長の不正が発覚し、その解任を求める議案に対しても、当事者である理事長も議決権を行使することができるというわけだ。覚えておきたい知識のひとつである。