多くの場合、新しいタイプの検査は、3年ぐらいかけてようやく1万人に達する。1年もかからずに10万人を超えたということは、やはり需要があるということだろう。この先、医療機関でN-NOSEが受けられるようになれば、がんがあることが分かった際の治療への移行もスムーズになる。助かる生命は飛躍的に増えるはずだ。

「現在運用されているのはがんの一次スクリーニング検査ですが、今後はがん種特定検査の開発を目指します。特定のがん種のにおいに反応しない線虫を作製し、特に予後が良くない膵臓がんに特化して研究・開発を進めています。今年中には最新の研究結果を発表します」(広津氏)

 昨年7月、筆者は自宅に検査キットを送ってもらい、N-NOSE検査を体験した。説明書に従って同封の容器に尿を入れて送るだけ。「ハイリスク」の判定が出たら、直ちにがん専門病院でがん検診を受けると決め、ドキドキしながら待っていたが、約1カ月後(サービスの運用が本格化した現在はもっと早いだろう)に届いた通知は「ローリスク」。ホッと胸をなで下ろした。

 一方、昨年12月末にこの検査を受けた40代の男性は、「ハイリスク」の結果を受けて病院を受診。父親を大腸がんで亡くしていたため、直ちに「大腸」を内視鏡で見てもらったところ、「1cmほどの腫瘍が見つかり、その場で切除して事なきを得た」という。術後に再度受けた同検査の結果は「ローリスク」。男性の腫瘍を切除した医師は「N-NOSE検査の存在は知っていたけど、まさか本当にがんの存在を的中させるとは」と驚いていたらしい。

「尿1滴」や「血液1滴」で「がんが分かる」と宣伝している民間の「がん検査」には、「体内にがんがあるリスク」ではなく、「将来、がんにかかるかもしれないリスク」を判定するだけの占いレベルのものが多く存在する。テレビや雑誌などで大々的に報道された検査でさえ、偽医療が混ざっているので注意が必要だが(参照『「線虫がん検査」のニセモノ横行に開発者が警告、インチキ医療の見破り方』)、その点、N-NOSE検査はがんの有無に焦点を当てており、医学的な研究に裏打ちされているため信頼できる。

 最もやっかいながんである膵臓がんを皮切りに、がんの早期発見が一気に進めば、多くのがんは近い将来、日帰りで治療できる病気になるだろう。