コロナ禍の巣ごもり需要を追い風に、21年3月期に過去最高益を記録した任天堂。同社のビジネスをけん引しているのが、家庭用ゲーム機「Switch」です。関連ソフトも好調な業績を支えています。こうした中、任天堂は10月8日、新型Switchを発売。技術的に目立った進展がないとされているこの新型機には、どんな勝算があるのでしょうか。(グロービス ファカルティ本部テクノベートFGナレッジリーダー 八尾麻理)
減収減益予想も、高収益が続く任天堂
コロナ禍でキャッシュリッチに拍車が掛かる
世界的なコロナ禍にあった 21年3月期 、家庭用ゲーム機「Switch」とゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」の世界的なヒットで、営業利益・純利益ともに過去最高を記録した任天堂。22年3月期はその反動から減収減益が見込まれているものの、それでも依然として高い、営業利益率30%超えを維持すると予想されています。
*22年3月は、2021年5月6日発表の決算短信記載の業績予想
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また、同社は高い収益性のほか、現預金から有利子負債を引いた手元資金を表す「ネットキャッシュ」が潤沢なキャッシュリッチ企業としても知られています。21年3月期にはその額が1兆1852億円に上り、1年前より約3000億円のプラスとなりました。
このように投資余力が十分な状況で、10月8日発売となったのが、Switchファミリー3機種目となる新型「Nintendo Switch(有機ELモデル、3万7980円)」です。現行機のゲーム体験を越える“何か”を期待したゲームファンが多い中、その内容はマイナーチェンジにとどまったといえます。
競合他社が4K対応や高性能チップで機能性を高めているのに対し、任天堂はどんな勝算があって「新型Switch」を投入しているのでしょうか。Switchの特徴について振り返りながら、今回の新型機に潜む、同社の製品政策について見ていきましょう。