最新テクノロジーが集うゲーム業界は、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)がこぞって参戦するなど競争環境が激変中だ。足元で日本勢は好業績をたたき出し、グローバルに存在感を見せつけているが、ゲーム市場の世界的な収益モデル転換の大波に乗り遅れており、実は危うい立場にある。そこで特集『業績 再編 給与 5年後の業界地図』(全16回)の#5では、今後の大変化を見通す上で不可欠なゲーム業界の「9つのキーワード」を解説するとともに、国内外の主要プレーヤーの業績予想、未来シナリオまで詳述する。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
GAFAや最新テクノロジーが集うゲーム業界
成長市場だが「稼ぎ方」は大きく変わる!
コロナ禍の巣ごもり消費の影響を一身に受けたゲーム業界。任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」は世界販売台数が2020年度だけで2883万台、昨年11月発売のソニーグループの新型機「PS(プレイステーション)5」は、初年度の世界累計出荷台数が780万台を突破するなどグローバルに人気ぶりが際立つが、今後も長らく好調は続くのか。
結論を言えば、この先も有望な市場であることは間違いない。米調査会社IDGによると、グローバルなゲームソフトの市場規模は25年に2870億ドルと、日本円にして30兆円を超える見通し。日本や欧米のみならず、アジアや中東、南米やアフリカといった新興地域で急拡大し、20年(2062億ドル)の約4割増というハイペースで伸びると予測されている。
つまり世界的な成長市場には間違いないが、その「稼ぎ方」は大変貌を遂げつつある業界でもある。なぜなら、クラウドや5G(第5世代移動通信システム)、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)などの最新テクノロジーが集結するゲーム市場は、米テック界の巨人、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)も続々と参入する戦国時代へと突入しているからだ。
以前から「X BOX」を展開する米マイクロソフト、ソニー、任天堂がゲーム端末を展開するプラットフォーマーとしてグローバル市場の中心を占める存在だが、他にも「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」の開発元であるスクウェア・エニックス・ホールディングス(HD)、「バイオハザード」や「ストリートファイター」が海外でも人気のカプコンなど、日本勢は世界で大いに存在感を見せつけており、グローバルでガチンコに張り合える数少ない国内産業の一つともいえるだろう。
しかし、ゲーム業界を担当するUBS証券の福山健司アナリストは、進化と変化が著しい同業界の5年後を見据えると、「日本勢はマネタイズ手法の多様化が海外勢に比べて遅れている」と危機感を募らせる。これは単なるデジタル化の取り組みを指しているのではなく、ソニーや任天堂も決して安泰ではない。
そこで次ページ以降、ゲーム各社がこれから行うべき収益モデル改革の在り方と直結し、雌雄を決する「9つのキーワード」を解説。これらキーワードが引き起こす収益格差を踏まえ、主要各社の5年後の売上高や営業利益の予想値を明らかにする。さらに、気になる年収比較と併せ、流転するゲーム市場の「稼ぎ方の未来図」を展望していく。