任天堂本社Photo:PIXTA

任天堂の業態転換は経営戦略論のよいケーススタディーといえる。その歴史を振り返ると、(1)経営者が自社の守備範囲を事前に絞らなかったこと、(2)長期の視点に基づいた世界経済の展開への適応、(3)才能の重視――の三つが浮上する。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)

2021年3月期の純利益は4803億円
前期から85.7%増加

 ゲームメーカーの任天堂が快進撃を遂げている。ゲーム機の「Nintendo Switch(ニンテンドー・スイッチ)」とゲームソフトの「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」などの世界的ヒットによって2021年3月期の純利益は4803億円と前期から85.7%増加した。

 その昔、任天堂は花札やトランプを主に作っていた企業だ。それが今や、世界にファンを持つゲームメーカーの座を確立している。任天堂の業態転換はビジネス・スクールの経営戦略論のよいケーススタディーといえる。任天堂の歴史を振り返ると、業態転換を支えた要素として、(1)経営者が自社の守備範囲を事前に絞らなかったこと、(2)長期の視点に基づいた世界経済の展開への適応、(3)才能の重視――の三つが浮上する。

 それが、世界中の人々に、より楽しい余暇の過ごし方を提供し、次から次へと続く任天堂の業態転換を支えた。任天堂の取り組みは、他の企業にも応用可能だ。積極的に自己変革を遂げて成長してきた同社の事業運営は、多くのわが国企業にとって模範といえる。