近年、劇的に変わりつつある「食」の世界。今後、地球規模の人口爆発による食料の供給不足や、外食業界での人手不足の深刻化、さらに新型コロナウイルスの流行で、ますます先行き不透明な時代になっていくでしょう。こうした深刻な問題を解決すべく、日本をはじめ世界各国が臨んでいるのが、「フードテック」です。「フードテック」とは、「フード」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語で、最先端の技術を活用し、イノベーションによって食の可能性を広げようとするものです。たとえば、培養肉や代替肉、スマート調理機器など、すでに実現しているものもあるのです。そこで前回に続き今回も、宮城大学食産業学群教授・石川伸一さん監修の著書『「食」の未来で何が起きているのか』(青春出版社)から、大豆ミートをはじめとする“もどき食材”の事例について抜粋紹介します。
“もどき肉”の大豆ミートが環境的にも注目される理由
人口爆発が引き起こす肉不足に、どのように対応すればいいのか。培養肉と並んで将来性を見込まれているのが、「もどき肉」ともいえる植物由来の代替肉だ。フードテックのスタートアップ企業は近年、新しい代替肉を開発しようと激しい競争を繰り広げている。
代替肉や培養肉が注目されている理由のひとつは、畜産が地球温暖化に影響を与えていることだ。国連環境計画の2018年の調べでは、人間の活動による世界の温室効果ガスの排出量は、CO2(二酸化炭素)に換算すると過去最高の553億トンにのぼり、その約15%は家畜に関連するものだという。