上司の「提案してほしい」に
隠される本音とは?
会社員のころ、ちょっと大げさに言わせてもらえば、何度もだまされた。というのは、上司が「会社や職場を良くしたいから何でも提案してほしい」などと言うので、一生懸命考えて、徹夜でリポートを書いたりしていたのである。
上司はみんな、自分がはるかに思い及ばないような立派な考えを持っていて、「会社を変えたい」「職場を改善したい」という尊い精神を持っているから、このようなことを言っているのだと思っていた。よって、必死にリポートを書いたのだが、もちろんそういう側面がゼロではないにしても、多くの場合はその裏に別の真意があるのだ。
出したリポートは「ありがとう!」とか「すごいなあ!」とかその場では反応があるものの、その後待てど暮らせど、フィードバックも音沙汰もない。きっと上司は忙しかったのだろう、などと思って上司のスケジュールを確認すると、「○○事業部のビジョンを語る泊まり込みじっくりマネジャー会議」と書いてあるではないか。
なんのことはない。この会議に出席する際に、事前に宿題が出ており、上司は改善提案をするためのフォーマットを埋める必要があったのだ。そして、そのための材料が欲しくて、部下に「提案してほしい」と言ったにすぎないのである。
したがって、上司としては「じっくりマネジャー会議」向けのフォーマットに何かを書き込めるネタができただけで万々歳であり、それをもって本件は8割ほど終了し、会議当日、そこに書いた内容について、それっぽいことを話すことができれば、それにて一件落着、私が提案した内容などどうでもよかったのである。
まあ上司なんてそんなものであって、それを知らなかった私がバカだったという話である。かつて部下として、同じような思いをしたことがある人でも、上司になったら普通はそんなものだろう(私は人間ができているからではなく、単に意固地になって、絶対にそのようなことはしなかったけれど)。
さて、とはいえ、上司が部下に提案をしてほしいというときには、いくつかのパターンがある。なかには、真剣に会社を良くしたいと思っているような場合もあるから、そのときの上司の状況をよく見て、それに合わせた対応をすることが肝要である。