ミサイル発射は
強硬姿勢の政党に有利

 ここまでの話を聞くとモヤモヤしたものを感じる方も多いだろう。

 もし選挙期間を狙ってミサイルを発射したら、安倍晋三元首相や高市早苗氏のように、北朝鮮に強硬な姿勢でのぞむ政治家や、厳しい制裁を訴えるような政党に票が流れてしまうおそれもある。そんな自分たちの首を絞めるようなことをするだろうか…と。

 そのご指摘はごもっともで、確かに北朝鮮が選挙のタイミングにミサイルを打てば打つほど、「国際社会と連携して制裁すべし」と訴える自民党の議席が増えて、「ミサイル発射はとんでもないが、まずは対話が基本」などと弱腰の政党が失速する、という現象が起きている。

 例えば、先ほども触れた2012年のミサイル発射後、「衆院選の候補者は敏感に反応。発射を強行した北朝鮮を一斉に非難した」(読売新聞2012年12月13日)と有権者の投票行動にも大きな影響を与えた。ミサイル発射直後、群馬県の会社員はこう述べている。

「打ち上げられたと聞いてどきっとした。今度の選挙でも日本の安全保障をきちんと考えてくれる政党を選びたい」(同上)

 この時、自民党は294議席獲得して大勝し、民主党から政権を奪取した。公示日にミサイル発射があった2016年の参院選も、自民党は議席を6増やして121議席。民進党は32議席に後退した。

 この傾向は、韓国も同じだ。日本の与野党候補者が選挙カーで「北の脅威」を連呼していた2012年12月、実は韓国も19日に大統領選挙を控えてザワザワしていた時だったのだ。当時、聯合ニュースが、任期を終える李明博大統領のインタビューを報じていて、その中で李氏は、北朝鮮が過去にも国政選挙に合わせて武力挑発を仕掛けてきたと指摘したうえで、こう述べている。

「北朝鮮好みの候補がいるかもしれないが、北朝鮮が(有権者の投票行動に)影響を与えることはできない」(読売新聞2012年12月3日)

 しかし、蓋を開ければ、朴槿恵氏が、筋金入りの親北政治家・文在寅氏に108万票余の差をつけて大勝している。投票日の6日前に発射された北のミサイルの影響もゼロではないはずだ。