敵視してくれる政治家・政党は
北朝鮮の思う壺?

 こういう事実を踏まえると確かに、「金正恩の選挙を狙ったミサイル発射は自分の首を絞めている」と感じる方もいらっしゃるだろう。しかし、筆者は「逆」ではないか、と考えている。

 国政選挙のタイミングでミサイルを発射するのは、北朝鮮の脅威を唱える政治家、厳しい対応を主張する政党が台頭してくることを期待しているようにしか見えない。

 つまり、金正恩氏が選挙のたびにミサイルを発射するのは、「北朝鮮に対して強硬姿勢の政治家・政党」を、文字通り「援護射撃」をしているのだ。

 なぜそんな自分を窮地に立たせるようなことをするのかというと、「体制維持」のためである。

 ヒトラー、カエサルなど歴史上の独裁者を見れば明白だが、独裁政権の維持のためには「強い外敵」の存在が必要不可欠だ。侵略や略奪に対する恐怖心のある国民は、議会制民主主義で不毛な議論を延々と続けられるより、「強いリーダー」がスピード感を持って「敵を叩く」と宣言するような専制スタイルを待望する。そのような国民的人気があれば、独裁者は政敵やクーデターをねじ伏せられる。

 つまり、独裁者にとっての「強い外敵」とは、「ものわかりの良い平和的な隣人」よりも、「常にけんか腰で何かとつけてイチャモンをつけるクレーマー」の方がありがたいのだ。

 激しいけんかを続けるにしても、和解して信頼関係を築くにしても、独裁者自身の「唯一無二の存在」という価値がつり上がるからだ。

 これは親子三代で独裁を続けてきた金正恩氏にも当てはまる。それを示したのがトランプ前米大統領だ。