仕事の「速さ」と「正確さ」を両立するのは難しい

──ただ、「即レス=仕事ができる人の必須条件」である、という風潮もありますよね。

 仕事ができる人ほど返信が速い、スピード感がある、といったような。会社によっては、「1分で返信しろ」など、反応が遅いことによって上司に叱責されてしまう、というところもありますし。

本田:うーん、私は以前から考えているのですが、仕事の「速さ」と「正確さ」を両立させるのは難しいんですよね。

 急いで焦って仕事をしたら、やっぱりミスも出やすくなりますから。ミスのない仕事をしようと思ったら、時間がかかるほうが当然なんです。

──なるほど。速ければ速いほど仕事のクオリティも上がる、という人もいますが……。

本田:世の中には一部、そういう人もいるでしょうが、稀じゃないかなと思います。

 だから、仕事の速さと正確さを両立させたいと思うのであれば、まずは丁寧に仕事をすることを重視し、次にスピード感を上げることを意識して訓練していく。

 そうしないと、速いけどミスだらけという仕事の仕方が癖になってしまいます。

──たしかに、どれだけ仕事が速くても、成果物の完成度が低かったら、意味がないですもんね……。

本田:そうなんですよ。私自身も、仕事の速さよりも正確さに重きを置いていて。発達障害を専門にしている私の外来はいま、1年待ちの状態なんです。

──1年待ち!? すごいですね。

本田:というのも、いまは初診に1時間かけて、再診に15分~30分かけているんです。

 もちろん、待たせないこと、スピードを優先にすることもたしかにできる。その日にいきなり来ても受け付けるシステムにすることもできる。でもそうすると、一人の患者さんに5分しかとれないんです。

 時々しか会えないけどじっくり話を聞いてもらうのと、来たら必ず会ってもらえるけど5分で帰されるのと、どっちがいいだろうと考えると、私はきちんと時間をかけて丁寧に診察したいんですよね。

──たしかに、来てみたものの、あまりちゃんと診てもらえなかった……となると、消化不良な感が残りそうです。

本田:もちろん、症状や病気によっては、そういうスタイルの病院も必要なんですよ。

 困ったときにすぐに診てほしい、という場合もやっぱりありますからね。でも、そういうスピード重視の病院では、応急処置はできても、根本的な解決は難しいんじゃないかな、と思っていて。

 だから私自身は、患者さんをお待たせしてしまうとしても、じっくりその病気と向き合って根本解決することを目指す診察スタイルを選んでいます。