自分はこの人生で、いったい何をしているのだろう?

 40代後半から50代は、言ってみれば人生の折り返し点である。人生の折り返し点にある人の心は、決して穏やかではない。そのような人たちの心の中で、いったい何が起こっているのか。

 それをつかむべく、大規模な面接調査を行ったのが、心理学者レビンソンである。レビンソンは、成人前期から後期への移行期を「人生半ばの過渡期」と呼び、自分の生活構造それ自体に疑問を抱くようになる時期であるとみなしている。

 まだまだ無限に時間があると思っていた40代前半までの頃と違って、残り時間を意識するようになる。それにより、残りの人生をできるだけ有意義に使いたいと思うようになる。そのような心理について、レビンソンはつぎのように指摘している。

「過去を見直したいという欲求は、限りある命だという認識が高まり、残る時間をもっと賢明に使いたいという気持ちから生じる」(レビンソン 南博訳『ライフサイクルの 心理学(下)』講談社学術文庫)

 そして、つぎのような疑問を抱くようになるという。

「これまでの人生でなにをしてきたのか? 妻、子どもたち、友人、仕事、地域社会――そして自己――から実際なにを得て、なにを与えているのか? 自分自身にそして他人に真に欲しているのはなにか? 自分の中心となる価値観はなにか? その価値観が生活にどう反映しているか? 自分のいちばんの才能はなにか? その才能をどう活用(浪費)しているのか? 若いころの<夢>でなにを果たしたのか、そしていまなにをしたいのか? いまの自分の欲望と価値観と才能を並立させて生きていけるのか? いまの生活にどの程度満足しているのか――自己にどの程度合っているのか、外界でどの程度効果的に機能しているのか――そして、いまの生活をどう変えたら、将来のためにより良い基盤が築けるか?」(同上)

 似たような思いに駆られたことはないだろうか。