人生の軌道修正を考える

 このような思いが脳裏をよぎったのをきっかけに、日頃の生活を振り返ると、それまでのように無邪気に仕事に没頭できなくなる。自分の日常を改めてじっくり見つめてみると、これまでとはまったく違った視界が開けてくる。

 そして、自動化していた日常に対して、何か物足りなさを感じるようになる。何か違うといった思いが脳裏をよぎる。仕事の最中も、ふと我に返ると、仕事の手が止まっており、物思いに耽っていたりする。

 疑問が湧くのは、仕事生活に対してだけではない。家庭生活をはじめとするプライベート面にも、物足りなさや納得のいかなさを感じるようになる。「これでいいのだろうか」「このままではいけないのではないか」といった思いが湧いてくる。

 そのように公私両面において強い不満が生じたり、何とかしなくてはという思いに駆られたりして、現実生活の歩みに乱れが生じる。ここでの課題は、30代の頃に確立された生活構造を見直し、40代後半から50代にふさわしいものへと組み替えることである。

 レビンソンが調査した35歳から45歳の人々のうちの約8割が、自己の内部における激しい葛藤や外界との激しい葛藤を経験していた。今は寿命が延びているため、この年代は40代後半から50代くらいに相当すると考えてよいだろう。

「(前略)大多数の者にとっては、『人生半ばの過渡期』は自己の内部での戦いのとき、外の世界との戦いのときなのである。大なり小なり危機を伴うときである。かれらは自分の生活のほとんどあらゆる面に疑問を抱き、もうこれまでのようにはやっていけないと感じる。新しい道を切り開くか、あるいはこれまでの道を修正するのに数年を要する。」(レビンソン 南博訳『ライフサイクルの心理学(上)』講談社学術文庫)