練習に参加する傍ら、
仕事や日本語のレッスンに励む

 ホームの試合をスタンドで観戦し、アウェイへの遠征へは原則帯同せずにインターネット中継などで視聴する状況に、ピエリアンは「悔しくはないです」と笑顔を見せる。

「試合に出られない状況はミャンマーでも体験している。ミャンマーでは大きなグラウンドでサッカーをしていたけど、ピッチが狭いフットサルは全部が新しい経験。ルールや動きを含めてさまざまな勉強をしながら、うまくなるために努力しているので」

 同時期に横浜に加入した、サッカー日本代表経験者の松井大輔ですら順応に四苦八苦している。フットサルと向き合う一日を、ピエリアンは午前4時の起床からスタートさせる。

 なぜこんなにも早いのか。答えは、原則午前6時から始まる横浜の練習にある。身支度を整えてフットサル場へと向かう移動時間を考えれば、おのずと早起きになる。

 松井とピエリアンを除いて、横浜にプロ契約選手はいない。全員が何かしらの仕事に就いて生計を立てている。ゆえに、午前8時には練習を終わらせる必要がある。

 もっとも、横浜のフットサル部門の渡邉瞬GMによれば、ピエリアンの年俸は「そこまで高いものではなく、生活ができる最低水準の金額になっている」という。

 8月20日に難民申請が認められ、5年間の在留と就労が可能となる在留資格を得たピエリアンは、横浜とのプロ契約後に自らの希望で平日の5日間は仕事にも就いている。

 クラブに紹介された化粧品関係の製造業で、練習後の午前9時からライン作業に入る。午後5時に仕事を終えると、通訳を含めて日常生活をサポートする在日ミャンマー人男性と一緒に暮らす、市内に借りた2DKのアパートへ慌ただしく帰る。

 午後6時過ぎから始まるのは、オンラインによる日本語のレッスン。ミャンマー語に堪能な日本人の有志の協力を得て、急ピッチで未知の言語を頭にたたき込んでいる。

 12月に26歳になるピエリアンをして、思わず「疲れます」と苦笑させる一日。その中でも日本語習得は、プレーヤーとして極めて重要な意味を持つ。前田監督が言う。

「今現在の一番の問題として、コミュニケーションの部分が挙げられます。ピッチがサッカーよりはるかに狭いので、ディフェンスとの関係性がより密になってくる。一瞬のコミュニケーションに必要な日本語を、彼も少しずつ学んでいる最中なので」