サッカー日本代表を率いる森保一監督に向けられる批判が、7大会連続7度目のワールドカップ出場をかけたアジア最終予選に入って一気に激しさを増している。金メダル獲得を公言しながら4位に終わった先の東京五輪を含めて、直近の戦いでようやく可視化されるに至った3つの問題点を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)
先制すれば勝てるが
黒星は挽回できない結末ばかり
敗れた試合後は言うまでもなく、白星を手にしてもメディアやファン・サポーターから批判が絶えない。サッカー日本代表を率いる森保一監督が逆風にさらされている。
来年秋に中東カタールで開催される、次回ワールドカップの出場権をかけたアジア最終予選。2日のオマーン代表との初戦でまさかの黒星を喫し、7日の中国代表との第2戦でなんとか勝利した直後に、森保監督は自身を取り巻く状況についてこう言及した。
「私自身は見ていないが、いろいろな記事が出ている状況は知人からの連絡で大体想像はつく。ただ、私は一戦一戦、常に生きるか死ぬかの覚悟を持って職に臨んでいる」
代表監督に就任したのは2018年7月。中国戦までに40試合を戦い、28勝5分け7敗の結果を残してきた。勝率は8割に達しても、手腕を疑問視されるのはなぜなのか。
7つの黒星には、実は看過できない共通点がある。オマーン戦を含めて全て相手チームに先制を許し、挽回できないまま試合終了を迎えている。
逆転勝利はわずか2度で、最後のそれは2019年1月までさかのぼる。先制されると極端に脆くなる傾向は、U-24代表監督を兼任した先の東京五輪でより顕著になった。
U-24スペイン代表との準決勝と、U-24メキシコ代表との3位決定戦でいずれも先制され、前者は0-1で、後者では1-3で敗れてメダルを手にできなかった。
不安視されるデータはまだある。東京五輪世代の指揮を託された2017年10月以来、先制された12試合で1分け11敗と一度も勝てないまま五輪本番を終えてしまった。
逆に、先制した試合は無敗を継続中だ。1-0で辛勝した中国戦で26勝3分けとしたフル代表に加えて、東京五輪代表でも14勝3分けと勝率は10割をキープしている。
森保監督が率いた代表戦における、例えるならばジキルとハイドをほうふつとさせる、表裏があまりにも対極に位置する試合結果は何を意味しているのか。