渡邉会長からも
心配の声

「石原派はこのままでいいのでしょうか」

 もう4年以上前のことである。

 山崎氏の事務所を訪れると、私が応接室に入ったのも気づかないほど、熱心に手紙を読んでいたことがある。入院中の渡邉会長からの直筆の手紙だった。全部はもちろん見せてくれなかったが、「ここな」と、指し示した箇所には達筆な文字で、

「石原派はこのままでいいのでしょうか」

 と派閥を案ずる言葉が書かれていた。山崎氏は、しばらくの間、上の空といった様子で、私も黙っていた。

「石原派は他派閥と合併はしないのですか」

 そう私が切り出すと、山崎氏は黙って首を横に振った。その時私は、かつて派閥会長を務めた長老政治家が

「小さくとも派閥のトップは、やっぱりトップ。メディアや周囲の扱いが異なるのだ」 

 と語っていたことを思い出した。

 山崎氏の安倍総理批判は年を追うごとに激しくなり、石原派からは、めったに閣僚が出ることもなくなっていたが、誰も、面と向かって苦言を呈することはできなかったのではないだろうか。まるで、引退した創業者が「実質的な会長」として君臨しているワンマン企業のように見えた。

 そんな中、岸田新政権が誕生。伸晃氏は最終的には岸田氏を支持したが、閣僚の数は再びゼロとなった。伸晃氏の存在感はほとんど消え、いざ解散となると、街頭で「お前は何かしたのか」と、有権者から罵声を浴びせられている場面もあった。

 一方の山崎氏は、北朝鮮交渉時前から交友の深い立憲民主党の辻元清美元議員の選挙戦が危ないことを知ると大阪に飛び、

「小選挙区は辻元でお願いします」

 と、応援演説を行っていた。その辻元もまた落選の憂き目をみている。
 
 そして、近未来研を継いでいたかもしれない甘利氏も、幹事長でありながら、今回の選挙では小選挙区で落選した。

 まるで、平家物語のような物語を読み終えたような気分だ。この先、近未来研はどうなるのか、先行きは全く見通せない。派閥政治は終わったのかもしれない。

【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。
29段落目:「伸晃氏は河野太郎氏を支持し、閣僚の数は再びゼロとなった」→「伸晃氏は最終的には岸田氏を支持したが、閣僚の数は再びゼロとなった」
(2021年11月8日13:31 ダイヤモンド編集部)