EC膨張 アマゾン・楽天・ヤフー 物流抗争#1

楽天グループは1500億円の出資を受けた日本郵政との提携で物流の立て直しを図っている。その第一歩が、ラストワンマイルの自前配送網「楽天エクスプレス」の切り捨てだ。突如として5月末で契約を打ち切られた全国の運送会社に衝撃が走った。この裏で楽天エクスプレスの実務を取り仕切ってきた元執行役員が、委託先の運送会社の業務委託料を個人口座に還流させていた「不正の構図」が発覚。その事実が公表されないまま結ばれた楽天と日本郵政の提携に暗雲が垂れ込める。特集『EC膨張 アマゾン・楽天・ヤフー 物流抗争』では、独自取材により真相に迫った。(ダイヤモンド編集部 村井令ニ)

三木谷社長肝入り「自前配送」を託された
ヤマト出身元幹部が手を染めた不正行為

 異例の大抜擢だった。伝説の営業マンだったA氏が楽天グループ(当時の社名は楽天)の執行役員に昇格したのは2016年7月。ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸から楽天に転じた翌年のことだ。

 A氏は、ヤマト運輸でアマゾンジャパンや楽天、アスクルなど電子商取引(EC)向けの法人営業を担当し、業界では「当日配送」のスピードサービスを拡大したことで有名だった。そのA氏が、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長に自前配送サービス「楽天エクスプレス」に参入するという大役を任される。

 楽天エクスプレスは、楽天が自前で配送網を持って手掛ける物流サービスだ。楽天が直接、トラックを保有したりドライバーを雇用したりすることはせず、現場の業務を外部の中小運送業者に“丸投げ”するビジネスモデルである。

 三木谷社長肝いりの物流網拡大を任されたA氏。自らが持てる人脈をフルに活用し、全国の中小運送業者との契約を次々と成立させていった。その結果、楽天エクスプレスの配送網のカバーエリアは驚異的な拡大をみせた。

 だが、その事業拡大には“裏”があった。A氏が運送業者への委託費用を自らの個人口座に還流させる不正行為を行っていたのだ。以降では、その不正の手口を解き明かすとともに、楽天による運送業者“切り捨て”の実態に迫る。