郵政消滅#13Photo:REUTERS/AFLO

日本郵政と楽天グループとの物流領域における提携が動きだした。手紙やはがきなどの郵便物が減少の一途をたどる中、日本郵政が望みをかけているのが、eコマース(EC、電子商取引)向けの宅配便市場である。ヤマトホールディングス(ヤマト運輸)とSGホールディングス(佐川急便)との争いに出遅れる日本郵便は、とりあえずは楽天という大口荷主を確保した。だが、採算に鈍感な日本郵政の先行きが明るいわけではない。特集『郵政消滅』(全15回)の#13では、郵便・楽天の物流タッグの船出と先行きを追う。

「楽天エクスプレス」打ち切りで
受託運送業者は大混乱

「5月末でサービスを終了する」

 楽天グループがeコマース(EC)「楽天市場」の出店者向けに提供していた“ラストワンマイル”の物流サービス「楽天エクスプレス」が突如打ち切られたことで、物流の現場が揺れている。楽天エクスプレスとは、楽天が運営していた配送センターから自宅や事務所などEC利用者の手元に届ける運送サービスで、配送作業を担っていたのは、100%外部委託の貨物運送事業者だ。

 だが、サービス終了の通告が楽天側からあったのは5月連休明けだった。「急過ぎる」。あまりに突然の打ち切りに、配送現場は怨嗟の声にあふれた。

 東京都内を活動拠点にするあるドライバーは5月14日に打ち切りを告げられたといい、事実上、それから2週間で契約解除になった。契約書には「契約解除の3カ月前に通知」の義務が明記されていたが、楽天側は「荷物配送の注文を止めるということで、これは契約解除ではない」との理屈でねじ伏せた。

 だが、日給制や歩合制の委託ドライバーにとっては契約解除と変わらない。このドライバーは「来月の仕事を探さなければ」という焦りが先行し、訴訟には踏み切っていない。実際、楽天エクスプレスの委託ドライバーは個人事業主が多く、訴えを起こす時間も金銭的余裕もないために「泣き寝入り」がほとんどなのが実態だ。

 他方で、楽天エクスプレスの業務を受託していた業者の中にはSBSホールディングスなど上場企業もいた。こうした被害企業の一部で訴訟準備に入る動きもあり、楽天の法的責任を追及する動きが表面化する可能性がある。

 楽天がラストワンマイルの配送を打ち切ったのは、日本郵政グループと提携を締結したからだ。楽天は出店者に提供している物流受託の配送サービスを日本郵便に一本化する方向だ。

 宅配現場に契約切りの衝撃が広がった一方で、コロナ禍の巣ごもり需要でECの配送の物量は激増している。前述のドライバーは楽天が打ち切られたすぐ後にヤマトホールディング傘下のヤマト運輸のEC宅配運送の委託業務が見つかった。混乱の宅配現場は人手のひっ迫は続いているようだ。