新型コロナウイルス下の巣ごもり需要が一服しても、アマゾンジャパン、楽天グループ、Zホールディングス傘下のヤフーを中心とする電子商取引(EC)は膨張を続けている。その裏で地殻変動を起こしているのが宅配を支える物流業界だ。物流の王国を築き上げたアマゾンは自前配送網を着々と強化する一方で、ヤマトホールディングスをはじめ宅配大手は単価下落に苦しんでいる。それでも荷物の増加は止まらない。パンク寸前の現場では、多重下請け構造を背景に不正行為や契約違反が横行。巨大化するアマゾンと群雄割拠する運送会社のパワーバランスは崩壊寸前にある。特集『EC膨張 アマゾン・楽天・ヤフー 物流抗争』では第2次宅配クライシスの危機が迫る「EC物流」の最前線を追う。11月15日(月)から19日(金)までの全5回連載で配信する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
#1 11月15日(月)配信
楽天・物流事業「運送会社切り捨て」と「不正金銭授受」の真相、日本郵政との提携に暗雲
楽天グループは1500億円の出資を受けた日本郵政との提携で物流事業の立て直しを図っている。その第一歩が、ラストワンマイルの自前配送網「楽天エクスプレス」の切り捨てだ。突如として5月末で委託契約を打ち切られた全国の運送会社に衝撃が走っている。その裏で楽天エクスプレスの実務を取り仕切ってきた元執行役員が委託先の運送会社の業務委託料を個人口座に還流させていた「不正の構図」が明らかになった。その事実が公表されないまま結ばれた楽天と日本郵政の提携に暗雲が垂れ込める。独自取材で真相に迫った。
#2 11月16日(火)配信
ヤマトが苦し紛れに「アマゾン再接近」、値下げ消耗戦突入でひた迫る第2次宅配危機
最初の「宅配クライシス」は、2017年にヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸がアマゾンジャパンに値上げを要請したことが発端となり勃発した。それから4年。ヤマトが実質的な“値下げ条件”をのむ形でアマゾンに再接近している。コロナ特需後も激増を続ける電子商取引(EC)の荷物を獲得するためだ。果たして、ヤマトは値下げ消耗戦に耐えられるのか。
#3 11月17日(水)配信
アマゾン「幹部失脚」と主力運送会社“切り捨て”の謎、物流業界にはびこる病巣の正体
日本でも物流の王国を築くアマゾンジャパン。2017年の宅配クライシスをきっかけに乗り出した「ラストワンマイルの自前配送網」が完成に近づきつつある。楽天グループが自前配送網の構築を投げ出す一方で、アマゾンはデリバリープロバイダーと呼ばれる中小運送会社の組織化を着々と進めてきたのだ。だが、順風満帆に見えるアマゾンとてラストワンマイルの末端では「闇」を抱えている。アマゾンに再接近したヤマトホールディングス(傘下にヤマト運輸)をはじめとする運送業界にはびこる構造的な病巣の正体に迫る。
#4 11月18日(木)配信
日本郵政による楽天「追加出資」案が急浮上!成果なき“アンタッチャブル提携”空転の深刻
日本郵政グループが楽天グループに1500億円を出資した「大型提携」の進展が全く見えない。提携の主軸になった物流分野では、日本郵政と楽天が物流会社を新設し、その傘下に楽天の物流センターを組み込んだ。だが、そうした組織体制の整備とは裏腹に、郵政グループ内では成長戦略なきままにトップダウンで交わされた両社の提携に“アンタッチャブル”な空気すら漂っている。そしてまた一つ、「不可解な事案」遂行の可能性が持ち上がっている。郵政が楽天に追加出資するという構想だ。その真相に迫る。
#5 11月19日(金)配信
楽天×郵政とヤフー×ヤマトが「アマゾンに完敗」の理由、裏に潜む物流業界のある事情
日本郵政グループ傘下に移った楽天の物流センターで“パンク”が相次いでいる。翌日配送の遅れが常態化しているだけでなく、商品を取り違えて発送する事故が表面化。にわか仕込みで手を組んだ楽天・郵政の物流の脆弱さが露呈している。そして、ヤマトホールディングスに物流を任せたヤフーでも、鉄壁のアマゾン物流網に対抗できていないのが実情だ。なぜ楽天・郵政連合とヤフー・ヤマト連合がアマゾンに太刀打ちできないのか。物流業界の構造を解き明かす。
Key Visual by Kaoru Kurata, Kanako Onda