日本郵政グループが楽天グループに1500億円を出資した「大型提携」の進展が全く見えない。提携の主軸になった物流分野では、日本郵政と楽天が物流会社を新設し、その傘下に楽天の物流センターを組み込んだ。だが、そうした組織体制の整備とは裏腹に、郵政グループ内では成長戦略なきままにトップダウンで交わされた両社の提携に“アンタッチャブル”な空気すら漂っている。そしてまた一つ、「不可解な事案」遂行の可能性が持ち上がっている。郵政が楽天に追加出資するという構想だ。特集『EC膨張 アマゾン・楽天・ヤフー 物流抗争』(全5回)の#4では、その真相を探る。(ダイヤモンド編集部 村井令ニ)
郵政・楽天の両トップ蜜月の裏で
急浮上する“追加出資500億円”構想
「三木谷(浩史・楽天グループ会長兼社長)さんとはケミストリーが合うんですよね」
10月13日、楽天グループが開催したオンラインイベントのトークセッションにゲスト参加した日本郵政の増田寛也社長は上機嫌だった。
画面越しに並んだ三木谷社長は「このマッチングは世界的に見ても類を見ないコンビネーション」と応じ、互いの“蜜月”をアピールしてみせた。
セッションのテーマは、日本郵政グループと楽天の資本・業務提携の将来像についてだ。昨年12月に日本郵政傘下の日本郵便と楽天は物流分野で提携。今年3月に提携範囲を広げる形で、日本郵政が楽天に1500億円を出資するに至っている。
両トップがそろって公の場に出るのは3月以来のことだ。今回のイベントで最も強調されたのが物流分野の提携だった。三木谷社長は「インターネットショッピングの比率が高まる中で、一番重要なのはモノを届けることだ」と言い切り、増田社長も「最初に提携の効果が見えてくるのは物流の分野だ」と意気込んだ。
すでに両社は物流合弁会社、JP楽天ロジスティクス(出資比率は日本郵便50.1%、楽天49.9%)を新設。7月1日から業務を開始している。
だが両トップのアピールとは裏腹に、新会社を取り巻くムードは冷め切っている。「両社のトップダウンで決まった会社。現場はどう関わっていいのか分からない」(日本郵便関係者)との声が漏れており、発足から4カ月が経過してもなお、具体的な方策が一向に打ち出される気配がない。
そうした中、日本郵政内部では「驚愕のプラン」が浮上している。その中身とは、日本郵政が楽天に追加出資を行うというもの。関係者によると、500億円の規模で調整が始まっているという。両社の提携でまだ確たる成果がないどころか、提携の“目玉”である物流新会社の明確な方向性すら示されていない。にもかかわらず、早くも追加出資案が取り沙汰されている。
なぜ、日本郵政が楽天の“打ち出の小づち”に成り下がりつつあるのか。その裏事情に迫った。