楽天底なしの赤字#5Photo:JIJI

3月にタッグを組んだばかりの楽天グループと日本郵政に、早くも不穏な空気が流れている。携帯電話事業の設備投資で資金流出が続く楽天は、宿敵アマゾンジャパンに対抗するための物流投資も必須な情勢。そこで楽天は、日本郵政傘下の日本郵便との物流合弁会社に物流センターを移管することで、その投資負担を軽減させようとしている。だがその考えと提携先の日本郵政の思惑には、大きなずれがある。特集『楽天 底なしの赤字』(全7回)の#5では、同床異夢となりつつある提携の実態に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

三木谷社長、日本郵政との提携は
「物流コストの合理化」と明言

「楽天市場の流通総額が増えているので物流はやらざるを得ない。ゼロから自分たちでやる選択肢も考えたがコストが高かった。日本郵政との提携は、物流コストを合理化できる座組みになる」

 5月13日にオンライン形式で開かれた楽天グループの決算説明会。冒頭のビデオ録画で、三木谷浩史会長兼社長が、日本郵政との提携の効果として真っ先に挙げたのは「物流」だった。

 いまやeコマース(EC)サイトを運営する企業にとって、物流を効率化して荷物をいち早く届けることは必須条件だ。この面でアマゾンジャパンは独自の物流インフラを構築しており、圧倒的な強さを誇る。

 それに対して楽天は、もともとアマゾンのような直販型ECではなく、出店者から手数料を得るショッピングモール型ECとして成長してきたことから、基本的には物流機能の強化を出店者に任せてきた経緯がある。だが、アマゾンとのサービス格差を縮めるためにも“他人任せ”の状況を放置するわけにはいかず、早期に物流インフラを整えなければならない。

 そこで楽天は、物流投資の“財布”となる存在として提携先の日本郵政に目を付けた。まず7月には、日本郵政傘下の日本郵便と物流新会社を設立する予定だ。

 すでに楽天が、将来的な物流投資の負担を日本郵政グループに委ねる姿勢が鮮明になりつつある。それどころか、「楽天市場」の出店者からは「楽天は物流を放棄しようとしているのではないか」と不信を抱く声も出てきた。

 実際に、日本郵政との提携が、楽天の「物流戦略の大転換」を意味するものであることだけは間違いない。