2017年の「宅配クライシス」は、ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸がアマゾンジャパンに値上げを要請したことが発端となり表面化した。それから4年。ヤマトが実質的な“値下げ条件”をのむ形でアマゾンに再接近している。コロナ特需後も激増を続ける電子商取引(EC)の荷物を獲得する競争は激しくなるばかり。果たしてヤマトは消耗戦に耐えられるのか。特集『EC膨張 アマゾン・楽天・ヤフー物流抗争』(全5回)の#2では、その最前線を追った。(ダイヤモンド編集部 村井令ニ)
アマゾンの出店者向け“特別運賃”
それを受け入れたヤマトの苦渋
「ヤマトホールディングス(傘下にヤマト運輸)が再びアマゾンにひれ伏した――」
複数の物流関係者がそう口をそろえる。11月11日、アマゾンジャパンがヤマト運輸と共同で、自社の電子商取引(EC)の出店者向けに「割安配送サービス」を開始したからだ。
アマゾンは直販が中心のEC事業者ではあるが、外部から出店する事業者が国内に約16万社もある。そのため、出店数約5.5万店の楽天市場や同約8万店のヤフー(ヤフーショッピングとペイペイモールの合計)に対抗して、出店者を囲い込むための割安配送サービスは必須だった。
問題は、その割引コストを負担するのがアマゾンではなくヤマトだということ。物流関係者が“ヤマト屈服”と見なすのもうなずける話だ。
「特別運賃に協力してくれたヤマトに感謝したい」。10月5日にアマゾンが開催したオンラインイベントで、アマゾンジャパンの永妻玲子セラーサービス事業本部長は、対談相手のヤマト運輸の長尾裕社長に謝意を表明した。かつて「宅配クライシス」でアマゾンに値上げを突き付けたヤマトが、再びアマゾンの値下げを受け入れたことを印象付けた瞬間だった。
なぜ、ヤマトが自らの首を絞めかねない「アマゾン再接近」の判断を下したのか。EC向け物流の競争構造と共に解き明かしていこう。