よくテレビで現場に赴く職員を「検査官」と呼んだりするが、これは大きな間違い。おそらくテレビ局が担当記者を置かず共同通信の配信記事に頼っているため、そうした理解がないせいだろう。

 検査の実施部隊を統括するのが事務総局。他省庁の事務次官に相当するのが事務総長、官房長に相当するのが事務総局次長だ。実施部隊は第1局~第5局に分かれ、それぞれの省庁などを担当する。

 たとえば第1局は7課あり、国会や裁判所、内閣、人事院、財務省、法務省、総務省、外務省などを担当する。身内である検査院を担当するのも第1局で、内部で優秀とされるエリートが配属されるようだ。

 冒頭に記載した通り、毎年11月上旬に院長が首相に報告書を手渡し、当年度は一段落ということになる。ここから翌年度の検査対象を各省庁や独立行政法人、補助金を受給している団体や企業の事業内容、各メディアの記事などを収集して絞り込む。

 そして各課で提案を持ち寄り、検査対象としてふさわしい、あるいは意味があると判断された案件について、各省庁などに照会するという流れだ。筆者もさまざまな省庁の官僚と付き合いはあったが、やはり検査を受ける側としては「面倒」というのが本音のようだ。

 そして照会から実地検査に着手。7月頃までに照会と回答を繰り返し、報告を取りまとめるため、7月下旬~8月いっぱいは全職員が出張停止となる。その後は10月中旬まで延々、内部の調整が続くといった具合だ(内部調整はマニアックなので割愛)。

 一般に新聞記事などで「無駄遣い」と表現されるが、レベルによって(1)不当事項、(2)意見表示、(3)処置要求、(4)特記事項――が「指摘事項」と呼ばれる(ほかに国会の要請による報告などもある)。こうした指摘はやはり不名誉なので、検査を受ける側の官僚らからは前述の「面倒」に加え、恐れられるというわけだ。

 実は検査院には警察や検察のような捜査権や、国税庁や証券取引等監視委員会のような強制調査権があるわけではない。検査はあくまで任意が原則で、ある幹部に「外務省や防衛省に『機密性』を盾に検査を拒否されたこともあった」と聞いたことがある。