そうした事情もあってか、会計検査院法第33条は「国の会計事務を処理する職員に職務上の犯罪があると認めたときは、その事件を検察庁に通告しなければならない」と明記しているが、あくまで協力をお願いするというスタンスと、天下り先を維持するため恨まれないようにという意味もあって「縄付き(逮捕者)を出さないのが良い検査」(元幹部)という文化もあるようだ。

検査院と担当記者に
「あうんの呼吸」

 冒頭、検査院は社会部記者が担当すると述べた。その理由を説明させていただきたい。

 検査院のHPには「検査報告とは」という項目があり、その中に「国民が予算執行の結果について知ることができる重要な報告文書であり、内閣送付のときには、マスコミを通じて広く報道されます」と表記されている。

 しかし、1000ページを超える報告書をすべて新聞に掲載するのは当然ながら無理がある。一方で、1年間の集大成である報告を国民に知ってもらいたいという気持ちは、検査院側にもある。そこで「各社が独自につかんだなら、事前に記事にしてもらって構わない」という暗黙の了解が発生するわけだ。

 そうはいっても検査院の職員も公務員なので、おおっぴらに庁舎内で手の内を明かすことはできない。そこで端緒をつかむため、警察官や検察官、事件関係者らへの夜討ち朝駆け(出勤や帰宅時間を狙い個別取材すること)に慣れている、デスク一歩手前で記者クラブに所属しない社会部のベテランが担当することになる。