「A」を「あぶりたて」に変えた
「PASBECONA」バージョン
ちなみに、同じ文章を2つ目の「A」を「あぶりたて」に変えた「PASBECONA」にすると次のようになる。
〈Problem〉問題
社内システムは15年前に構築され、今ではかなり使い勝手が悪い。システムが古いのでモバイル端末との連携が悪く、顧客への情報提供に時間差が発生。顧客からたびたび指摘を受けている。また、情報更新の都度、手作業が発生し、毎日1時間の無駄が発生している。この作業を担当する他の社員3人も同じ状況なので、4人で1日4時間を無駄にしている。
〈Agitation〉あぶりたて
このままこのシステムを使い続けると、顧客満足度を下げる懸念が強い。また、手作業を続けることで、今後担当者が入れ替わったときに重大ミスが生じ、顧客の信頼を失う危険性もある。
〈Solution〉解決
そこで、〇〇というシステムを導入する方法がある。
〈Benefit〉利得(ベネフィット)
これさえあれば、モバイル端末や周辺システムとの連携が非常にスムーズになり、顧客の不満も解消できる。さらに、4人計1日4時間の手作業の8割が効率化できるので、1日あたり3.2時間、1ヵ月で64時間の削減が可能。
〈Evidence〉証拠
このシステムは、大手企業から中小企業まで含めすでに〇社に導入済で、生産性向上の実績を挙げている。
すでに導入済の企業と生産性向上実績は次のとおり。
〇〇、〇〇、〇〇、〇〇。
〈Contents〉内容
このシステムの導入方法は非常に簡単。次のステップで1週間で切替が可能。
ステップ1:〇〇
ステップ2:〇〇
ステップ3:〇〇
〈Offer〉提案
導入費用は15万円。一方、4人計1ヵ月で64時間の削減が可能。これに時給をかけたものが「効果額」。さらに残業代削減にもつながるので、残業代の割増分も効果として加わる。よって、導入費用の15万円は「〇ヵ月」で回収可能である。
〈Narrow〉適合
手作業による重大ミスの発生を防ぎ、顧客満足度の向上を重要視するなら、今このシステムの導入がぜひとも必要。
〈Action〉行動
各種設定は私ができるので、〇〇システム導入の承認を早急にいただきたい。
「PASONA」のときと、配置が変わったり、新たな情報が加わったりするが、「PASBECONA」のほうが、B(利得)、E(証拠)、C(内容)がより明確に打ち出せる。
企画書・提案書・プレゼンでも、人に何か行動してもらうことを目的とする場合は、セールスの場合と同様、ベネフィットがポイントだ。
こちらの言いたいことだけをいくら主張しても、人はなかなか動いてくれない。その主張を受け入れることで、「自分や自社にとってどんないいことがあるのか」がわかれば、行動へのインセンティブは格段に上がる。
「旧PASONAの法則」を企画書・提案書で使うときのポイントを整理しておこう。
では、2つ目の「A」を「あぶりたて」に変えた「PASBECONA」で書く場合のポイントも整理しておこう。
これに沿って企画書・提案書を書けば、書き手はスラスラ書け、読み手は上司でも部下でも顧客でも、思わず前のめりで読み進めてくれるだろう。
文中にNOという理由がなく、次への行動が具体的に示されていれば、あなたの狙いどおりに読み手を動かすことができる。
セールス以外の場面でも、人を動かす必要があるときには、コピーライティングの技術をフルに活用してほしい。
次回は動画にもコピーライティングが必要な理由を紹介しよう。
(本原稿は、神田昌典・衣田順一著『コピーライティング技術大全──百年売れ続ける言葉の原則』からの抜粋です)