鳴かず飛ばずの商品などがヒット
コロナ禍で過去最高益を更新

 キングジムの強さは、宮本社長が「もはや何屋さんか分からない」と言うほど、幅広い商品展開にある。キングファイルやテプラなどに代わり、コロナ禍の経営を支えたのは、家具やキッチン家電、衛生用品だった。

「キングジムグループは家具のオンライン販売がメインの『ぼん家具』を傘下に持っています。巣ごもりで家の中を整理したくなった人が増えたせいか収納用品、テレワークの増加によりデスク・チェア用品の売れ行きが好調でした。

 他にも、主にキッチン雑貨を取り扱う同じくグループ会社の『ラドンナ』も家で料理する人が増えたことで、売り上げを伸ばしました。低価格のトースターやコーヒーメーカー、ホットサンドメーカーが非常に売れましたね。

自動手指消毒器 テッテ自動手指消毒器の「テッテ」(右)をはじめ、売り上げを伸ばした感染症対策製品(筆者撮影)

 また、何より驚いたのは自動手指消毒器の『テッテ』の躍進です。もともとはインフルエンザ予防の関連製品ということで、コロナ禍前の2019年に発売したのですが鳴かず飛ばず。生産を中止しようかと思っていたところ、コロナ禍で怒濤(どとう)の発注が舞い込みました」

 陰る商品があれば、光が当たる商品もある。機を見るに敏な宮本社長は、キングファイルで使用している素材で「クリアーパーティション」「フェイスシールド」「マスクケース」など、感染症対策に活用できる製品を立て続けに発売。ピンチをチャンスに変えたキングジムは、2021年6月決算で過去最高益を更新した。