あせるバイデン氏、インフレが好景気を帳消しPhoto:Anadolu Agency/gettyimages

【ワシントン】ジョー・バイデン米大統領は、世界における米国の競争力を引き上げ、新型コロナウイルス禍で深刻な打撃を受けた労働市場を急回復させるため、一連の経済対策を掲げて就任した。それから10カ月、バイデン氏の目の前には新たな経済問題が山積している。

 米国の新規失業保険申請件数は先々週、52年ぶりの低水準に改善。求人件数は過去最多水準で推移しており、個人消費も上向いている。だが、バイデン政権はサプライチェーン(供給網)の目詰まりや30年ぶりの高水準に跳ね上がったインフレにより、こうした良好な経済動向を手放しで喜べない複雑な状況に陥っている。

 バイデン氏はここにきて、政権として物価高や供給網のボトルネックに対処していることを国民に見せようと必死だ。背景には、顧問らの間で来年の中間選挙で大敗を喫するとの危機感が高まっていることがある。ホワイトハウス関係者によると、バイデン氏は経済担当の最上級顧問に対し、これらの問題に注力するよう指示。港湾施設に放置されているコンテナの数やその滞留時間といった細かいデータを追跡する作業部会まで設置した。

 ただ、物価高の抑制や供給網の改善に対して、バイデン政権が打てる手は限られるとの指摘は多い。戦略石油備蓄の放出や港湾の稼働時間延長といった政権の対策が目先のインフレ抑制につながるかを巡っては、エコノミストの間で懐疑的な見方が広がっている。