デジタルで「一客一亭」を実現

 廚 菓子 くろぎと同じLINE公式アカウントを利用している姉妹店、「廚 otona くろぎ」(PARCO_ya上野店)では最近、テーブルオーダーを導入した。結果、かき氷にトッピングする人が増え、もともと高めだった客単価がさらに10%近く上がっているという。実際、Instagramで「#くろぎ」と検索すると、「トッピングしちゃった」という楽しそうな投稿が見られる。

「口頭注文の場合、あれこれトッピングしたり、苦手な食材を抜いたりといった複雑なカスタマイズが迷惑になるんじゃないかと遠慮してしまったりしますよね。LINEミニアプリなら、ただチェックをいれるだけなので、たくさんわがまま言っていいよねって。スタッフのヒューマンエラーも減ります。つまり、デジタルによってお客さまのニーズに合わせた対応がしやすくなったんです。これこそ一客一亭。私たちが目指してきたおもてなしの姿なのではないかと思います」

廚 otona くろぎのテーブルオーダー Photo by Mayumi Sakai廚 otona くろぎのテーブルオーダー Photo by Mayumi Sakai

 2回にわたり、LINEを使った飲食店のDXを紹介した。後日、筆者は、廚 菓子 くろぎを訪れ、LINEミニアプリを使って順番待ちをしてみた。かき氷を一口食べて、やっと事の本質に気づいた。DX以前に、ものすごくおいしいから客足が絶えないのだ。DXはあくまでこのおいしさをより多くの人に伝えるための手段にすぎない。「頑張って並んだね」ではなく、「おいしかった、また来よう」という満足感とともに店を後にしてもらうためのものだ。

廚 菓子 くろぎ 取材当時の季節限定のかき氷「紫芋子」 Photo by Mayumi Sakai廚 菓子 くろぎ 取材当時の季節限定のかき氷「紫芋子」 Photo by Mayumi Sakai

 次回は、LINEミニアプリ事業企画室 室長 谷口友彦さんに、LINEミニアプリが現在の形に至るまでのハード・シングスを聞く。