酒井真弓氏(左)、鎌田敬介氏(右)酒井真弓氏(左)、鎌田敬介氏(右)

「DXの課題は、勉強する気のない子どもをどうやってやる気にさせるかに似ている」――こう表現するのは、Armoris取締役CTOでサイバーセキュリティの専門家である鎌田敬介氏だ。日本企業のDXを阻害する要因は何か、どうすればDXが進むのか?『ルポ 日本のDX最前線』筆者の酒井真弓氏が鎌田氏に訊いた。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
※本稿は、酒井真弓著『ルポ 日本のDX最前線』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

 国内外でサイバー攻撃演習を実施している鎌田敬介氏は、活動を始めた2007年当時と比較して、特にASEANにおける参加者のレベルが格段に上がっていると証言する。欧米への留学経験者も増えて英語で活発に議論できる上、演習の終了後も質問が飛び交い、有事に見舞われたときに相談できるよう、人的コネクションの維持にも余念がないという。

 一方、「会社に行けと言われたから参加しました」というのが日本の参加者のスタンダード。主体性に乏しく、参加者同士で議論してもらうきっかけを作るのにも苦労することがあるという。経済成長が鈍化し、「失われた30年」などと揶揄される現在の日本だが、サイバー攻撃演習の取り組み方一つ取っても、その一因が垣間見えるようだ。この傾向が、日本企業のDXに無関係とは言い難い。


形式にとらわれすぎる社員

酒井 諸外国と日本の会社員を比較して、DXを阻害する要因はどこにあると考えますか。