「5万円クーポン」のルーツは公明党「商品券構想」

 実は今回の「5万円クーポン」のルーツをたどっていくと、1998年の参議院議員選挙で、公明党が掲げた「商品券構想」という公約に突き当たる。

 97年に消費税が5%に引き上げられたことを受けて、その経済的負担分を国民に商品券の形で払い戻して消費拡大につなげる、というもので、「全国民と永住外国人を対象に1人3万円分、総額4兆円」という「緊急経済対策」だった。

 すっかりクーポン慣れしている令和の日本人からすれば、驚くような話ではないかもしれないが、当時はこんな発想はなかった。日本経済新聞は「ナンセンスの一言に尽きる」(日本経済新聞1998年7月2日)とバッサリ。当時の宮沢喜一蔵相も「常識で考えられない」(読売新聞1998年10月8日)と述べ、ある自民党政調会の幹部も効果を疑問視した。

「商品券で生活必需品を買う一方、現金を預金に回せば実質的に消費喚起の効果はない」

 不景気の世で苦しむ庶民なら、浮いた金ができれば貯蓄に回すという判断をする人も多い。新たな消費につながるわけがない。当時の政治家らは、ある意味、国民目線の「まともな反応」をしていた。

 しかし、そんな非常識でナンセンスな構想も、商品券問題検討会が立ち上げられて、自公の協議がスタートするや否や、あれよあれよという間に実行に移された。もちろん、今回の10万円給付のように公明も歩み寄って、費用も2万円分に減らし、対象も15歳以下の子ども、老齢福祉年金受給者に絞られた。そうして出来上がったのが、「ふるさとクーポン」、またの名を「地域振興券」である。