「地域振興券」と「5万円クーポン」を巡る状況は酷似
誰がどう見ても、経済対策ではなく、「自公政権安定化」を目的とした公明対策だった。実際、自公連立のキーマン、野中広務内閣官房長官(当時)は実施した際に、派閥の集会で「天下の愚策かもしれないが、七千億円の国会対策費だと思ってほしい」(「野中広務 差別と権力」魚住昭著、講談社)と述べた…というのは有名な話だ。
もちろん、こんな話が聞こえてくれば、マスコミも黙っていない。日本経済新聞(1998年11月10日)は『それでも「商品券」なのか』という社説で、小渕政権を「“商品券つき公明党”の協力を得て国会を乗り切る」「政策の貧困は首相のボキャブラリーの貧困以上に重症だ」と痛烈に批判。その一節を紹介しよう。
いかがだろう、令和3年現在の「5万円クーポン問題」に寄せられている批判と恐ろしいほど重なっていないか。つまり、われわれは1998年の「愚策」を23年経て、忠実に再現しようとしているのだ。
ちなみに、「地域振興券」の消費喚起効果はどうだったのかというと、かなり微妙だ。経済企画庁は、「2025億円」(内閣府「地域振興券の消費喚起効果等について」)の消費を押し上げたと推定している。しかし、約7700億円の税金を投入してこの程度ということは、多くの人が懸念していた通りになったということだろう。実際、総務省統計局によれば、「地域振興券」が流通した後、1999年9月〜11月の1世帯当たり消費支出は1カ月平均33万5114円で、昭和34年の調査開始以来初の減少となっている。
こういう歴史の教訓がありながら、自公はまた同じ過ちを繰り返そうとしている。しかも、ただ同じことをやっているわけではなく、そこに至る意思決定を見ると、23年前よりも酷いことになっている。