議員の金銭感覚が鈍化、過去の愚策から学ばないベテラン

 1998年の際には、公明党が「商品券」をバラまくことを要求して、良識のある自民党議員たちが反対をしながら妥協策を探るという構図だった。

 しかし、今回は公明党が現金給付を要求していたところ、自民党側から「半分をクーポン」という妥協策を持ちかけた。「クーポン」に対する意識に関しては、自公で逆転してしまっているのだ。

 23年前も今もこれが「公明党対策費」であることは否めない。が、昔の自民党にはまだ「クーポン」に否定的な人々も多くいた。紙で渡しても貯蓄に回らないという庶民の金銭感覚もわかっていた。

 しかし、23年を経てついにそういう庶民の金銭感覚までわからなくなってしまった。今の政権与党の中には本気で「現金でのバラマキよりもクーポンの方がマシ」と考えている人がかなりいる。

 つまり、これは7700億円を無駄遣いした「失策」から何も学んでいないということに他ならない。日本の政治は現状維持どころか、「後退」しているのだ。

「そんな昔のことを今の自民議員は覚えてないのでは」と思う人もいるだろう。確かに、小泉チルドレンとして当選したような世代や若手議員は何のことやらだが、今の政権幹部はみんな知っている。

 公明党が「商品券構想」を掲げて、野中広務氏ら自民幹部が「落とし所」を探っていた時、岸田文雄首相は党青年局長だった。1993年に初当選した同期の茂木敏充幹事長もマッキンゼー出身の経済通として将来を嘱望されていた。

 つまり、今で言うところの、「安倍チルドレン」のような若手ポジションながら、「天下の愚策」と叩かれながらもクーポンが社会にばら撒かれていく経緯と、大した消費喚起効果もないという結果を、当事者の一人としてご覧になっているのだ。

 にもかかわらず今回、「5万円クーポン」に踏み切った。意味のない政策かどうかわからないで実現するのと、意味がない政策だということをわかったうえで実現をするのでは、後者の方がより罪深く、より国民を愚弄している、ということは言うまでもない。