写真:持続化給付金写真はイメージです Photo:PIXTA

警視庁は国から新型コロナウイルス対策の持続化給付金をだまし取ったとして、詐欺の疑いで立川署交通課の巡査部長の男(59)を今月3日付で書類送検し、懲戒免職処分にした。元巡査部長はあと数カ月で定年となり、退職金2000万円超が支給されるはずだったが、それもフイになった。ほかにも経済産業省キャリアや税務署、国立印刷局の職員らも給付金詐欺で立件され、いずれも懲戒免職に。明日の生活費にも事欠くのであれば「やむを得ず、のるかそるか」に賭けたのも理解できるが、いずれも行き詰まっていたわけではなさそうだ。給付金詐欺は、ちょっと調べれば簡単にばれる稚拙な手口だ。経産省は本格的な不正受給の調査に着手、その上で「身に覚えがある人たち」に自主的な返還を呼び掛けている。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

不倫相手に持ち掛けられ
妻に詐欺の片棒を担がせた警察官

 元巡査部長の書類送検容疑は昨年11月、パート従業員の妻にコロナ禍で収入が激減した個人事業主である家政婦と虚偽申請させ、給付金100万円を国から不正受給させた疑い。容疑を全面的に認めているという。

 当初、警視庁の聞き取りに「妻が勝手にやった」と説明していたが、詐欺事件として捜査されていると察知。言い逃れできないと観念し、関与を認め全額を返還した。「不倫相手との交際費に使うつもりだった」と供述、妻も共謀したとして書類送検されたが「警察官の夫が言うので大丈夫と思った」とうなだれていたという。

 全国紙社会部デスクによると、ばれた背景はお粗末だ。妻はこれまで扶養手当の対象に収まるよう103万円以下の収入に抑えていたが、今年3月、扶養手当の対象だったのに収入が一気に増えたことで、元巡査部長が住む自治体から立川署に税額変更の通知が届き、たやすく見破られてしまった。