ウォーキングしながらの1on1!? コロナ禍という制約を生かせるかどうかはマネジャー次第

 2021年11月現在、日本では新型コロナウイルス感染者の増加に歯止めがかかり、街には人出が増えましたが、完全に「コロナ禍前」に戻ることはないでしょう。多くの企業が採らざるをえなかったリモートワークは、それが思いのほか「使える」ものであることがわかり、今後も出社/リモートの併用が続いていくと思われます。

 リモートワークが常態化し、上司と部下とが顔を合わせる頻度が減ったことにより、再び上下間コミュニケーションの危機が課題となりました。1on1が定着した企業も、ひとまず中止した企業も、あらためて上下間コミュニケーションのあり方を検証し、適切な手立てを検討する必要に迫られています。それまでは「1on1なんて必要ない」と言っていた人たちも、「きちんと話す場/話を聞く場は必要だ」と実感し、考えをあらためるケースが増えたと感じます。インフォーマルな対話の場がつくりにくい状況で、半ばフォーマルな場で話す/聞くことが必要だ、と変化してきたわけです。

 そんな新しい状況にあって、多くの管理職、そして企業が独自のやり方を工夫しています。たとえば、本書では次のような例を紹介しました。

 リモートで1on1を取り入れた、あるマネジャーのエピソードを紹介します。そのマネジャーは緊急事態宣言で完全リモートになった際、メンバーのコンディションを心配してオンラインでの1on1を始めたそうです。その結果、多くのメンバーがひとりで不安を抱えることなく、仕事に向かうことができたといいます。しかし、同じタイミングで業務量が急増し、オンラインでの1on1の時間さえもメンバーの負担につながる状況に陥ってしまいました。
 ですがこのマネジャーは、現場の負荷が高まっているからこそ、1on1による支援が必要と考えたそうです。そして、コロナ禍の健康管理としてウォーキングが奨励されていたこともあり、メンバーのウォーキングの時間に合わせて自分もウォーキングをしながら、イヤホンをつけて携帯電話で対話をしたそうです。(『部下が自ら成長し、チームが回り出す1on1戦術』71-72ページ)

 会社の制度として決められたから1on1を始めた、というケースは多いですが、本当に成果を上げるためには、積極的に取り組む必要がある――コロナによって生じた制約は、そんなことも浮き彫りにしたといえます。

 ウィズコロナの時代であっても、マネジャーが目的を達成するために、メンバーの状況やさまざまな制約条件を前提に最適な方法を考えることが、マネジメントを進めていく中で最も重要なことには変わりないのです