かつてであれば、FRBが政策金利を上げ始めて3回目を超えるあたりから株価の大幅下落が心配になるくらいが「利上げと株価下落の距離感」だった。ところが今回は、金融緩和と財政の後押しの規模が大きい。利上げの初期、あるいは利上げに至る前の段階で、株価が大きく下落する場面があってもおかしくない。

 もっとも、「金融緩和→株高→金融引き締め→株価下落」というサイクルは何度も繰り返すことが自然である。「金融引き締め→株価下落」を自分だけうまく回避しようというのは、投資家として当然の希望ではあるかもしれない。だが、これをうまくやる(正確には「他の投資家よりもうまくやる」)ことは至難の業だ。

 コロナだけではなく金融政策に関しても、「時々の情報と市場参加者の予想は時々の株価に反映している」という原則が当てはまる。そのため、投資家にできることは、「自分にとって適量のリスクを適切な形でバイ・アンド・ホールドすること」だという原則に変化はない。

 乱気流の中を飛ぶ飛行機の乗客のように、シートベルトを引き締めて気持ちの悪い状況をやり過ごすしかない。パイロットの代わりに、もっとうまく操縦しようとしない方がいい。

日本の投資家にとっての慰め
数年単位の株価推移はそれほど悪くない?

 経済回復もデフレからの脱却も遅れ、コロナに関わる巡り合わせまで悪い日本の投資家にとって、いくらか慰めになるのは、日本の株価水準が割高であるようには見えないことだ。

 大まかに言って、東京証券取引所第1部の平均で15倍程度のPER(株価収益率)、1.3倍程度のPBR(株価純資産倍率)、約2%の配当利回りは、大いに地味だ。日本経済への成長期待の低さを相当程度反映している。

 1年以内くらいの短期的な動きでは、米国を主とする海外の株価の動きと同調して日本株の株価は振り回されるだろう。しかし、今後の「(大きく?)調整して、また戻る」数年単位の株価の推移を考えた場合に、「相対的には、それほど悪くないのではないか」という期待を持つことができると筆者は考えている。

 付け加えるなら、株価の形成が正しいとすると、高成長な国の株式も低成長な国の株式も、等しく愛して保有し続けるのが、投資家としては合理的で正しい態度だ。