富士フイルムとニコンに見る、カメラメーカー生き残りの鍵【決算書で比較】Photo:123RF

筆者の新刊『見るだけで「儲かるビジネスモデル」までわかる 決算書の比較図鑑』では、ひと目で会社の儲けの構造やビジネスモデルの違いが分かるように、さまざまな会社の決算書を図解して比較している。今回は、ニコンと富士フイルムホールディングスの決算書を比較して、カメラメーカーの生き残りのカギを探っていこう。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

デジタルカメラの不振で
営業赤字に転落したニコン

 今回は、カメラメーカー大手として知られるニコンと富士フイルムホールディングス(以下、富士フイルムHD)の決算書を比較していく。スマートフォンの普及でデジタルカメラの市場は縮小が続いている中、生き残りのカギはどこにあるのか。決算書のデータから読み解いていこう。

 下の図は、ニコンの2021年3月期の決算書を図解したものだ。

 貸借対照表(B/S)の左側(資産サイド)において最大の金額を占めているのは、流動資産(約6760億円)だ。

 この流動資産の中には、現金及び現金同等物が約3520億円計上されている。売り上げの規模から見ても、ニコンは十分な手元資金を確保しているといえるだろう。

 また、流動資産には棚卸資産(在庫)が約2360億円計上されている。これは、年間売上収益(約4510億円)の約191日分に相当する金額である。事業セグメント別の資産の状況を見る限り、この棚卸資産の多くは液晶などのフラットパネルディスプレイ(FPD)露光装置や半導体露光装置を手掛ける精機事業に属するものだと推測される。