K字決算#03Photo:MACRO PHOTO/gettyimages

半導体市場の活況で好業績に沸く半導体製造装置業界。だが、最先端技術を使う半導体の需要が高まる中で、その恩恵にあずかり切れない企業もある。露光装置を手掛けるニコンとキヤノンだ。特集『戦慄のK字決算』(全17回)の#3では、かつて露光装置で圧倒的な地位を誇った両社が置かれる厳しい環境について分析する。(ダイヤモンド編集部 山本輝)

巨額設備投資に沸く半導体装置産業で
活況に乗れないニコンとキヤノン

 2021年は約300億ドル(約3.3兆円)、今後3年間では1000億ドル(約11兆円)もの巨額な設備投資を行う――。

 4月15日、半導体受託製造会社の世界最大手である台湾のTSMC(台湾積体電路製造)は、決算会見でそんな強気な姿勢を示した。1月に21年の設備投資を280億ドルとアナウンスしてから、わずか3カ月での上方修正となった。

 いまや世界的な半導体不足だ。5G(第5世代移動通信システム)やデータセンターへの活発な投資に加え、パソコン、スマートホンなどの需要増加を背景に、半導体のニーズも急増。コロナ禍によるデジタルシフトの加速の後押しもあり、幅広い世代の半導体が逼迫する中で、自動車産業のように半導体の「奪い合い」に敗北する企業も出始めた。

 半導体のニーズは当面底堅い。半導体メーカーも大型投資に踏み切っている。TSMCのみならず、韓国サムスン電子も21年にTSMCに匹敵する規模の設備投資が見込まれ、米インテルは200億ドルを投じて米国に二つの新工場を建設する計画をぶち上げている。

 各社の旺盛な設備投資を受けて、半導体製造装置産業も活況だ。東京エレクトロンやアドバンテスト、ディスコなど製造装置各社が21年3月期に過去最高の売上高を見込んでいる。国際半導体製造装置材料協会(SEMI)によると、20年の半導体製造装置の世界販売額は712億ドルで過去最高だった。

 沸きに沸く半導体産業だ。にもかかわらず、必ずしもその恩恵にあずかり切れない企業がある。

 それが、半導体の露光装置を手掛けるニコンとキヤノンだ。

 なぜ両社が恩恵にあずかれないのか。それは、いまの「特需」を招いている半導体トレンドそのものに要因がある。