「バイモーダル」が仕事に成果を生み出す

――ビジネスにおける「遊び」の可能性をどうお考えですか。

正木 仕事は主体的にやらないと面白くないですよね。やらされる仕事は苦痛なだけです。主体性の基礎となるのは「自発性」であり「情熱」です。また、仕事のチームに求められるのは、仲間との「共同作業」であり、仲間たちへの「共感」です。それらは全て遊びの中で培われるものです。子どもの頃を思い出すだけでなく、仕事の中に遊びの要素を入れていくことで、ビジネスに求められる感性やマインドが鍛えられるのではないでしょうか。

――つまり、仕事に「こどモード」を導入するということですね。一方で、厳格に成果が求められる側面が仕事には必ずあります。一つヒントになりそうなのが、最近IT業界でいわれている「バイモーダル」(※3)です。これは、安定や安全を重視する「モードワン」と、アジリティー(機敏さ)や柔軟性を重視する「モードツー」の両方が大切であるという考え方です。ビジネスの現場でも、成果を真面目に求める「まじモード」と、遊び心を大切にする「こどモード」のバイモーダルが実現すれば、仕事の生産性と楽しさが両立しそうです。

正木 2つのモードがあって、それを自在にスイッチできる力があれば、仕事はがぜん面白くなるでしょうね。例えば、新しいテクノロジーから何を生み出していくかを考えるのは、子どもが目の前にある石や木の枝や道具を使ってどう遊ぼうかと考えるのと同じだと思います。そう考えれば、「こどモード」が「まじモード」の成果につながる可能性もあるわけですよね。

「111の白昼夢」で中川さんは、商業写真家としてのモードを「こどモード」に切り替えることで新しいものを生み出されたといえると思います。これからの時代は、バイモーダルに動ける人こそがプロフェッショナルであるということになるのかもしれません。

――単純に、ワンモードでやっていこうとすると息が詰まりますよね。ストレスから自由になるという点でもバイモーダルが必要という気がします。

正木 そうそう。遊び心を抑圧すると、結局ストレスになるんですよ。ストレスからフリーになるためにも、ぜひ「こどモード」にチェンジする時間を大切にしていただきたいですね。

アートを生み出し、ビジネスマインドを鍛える「遊び」の力左から正木氏、中川氏、河嶋氏 Photo by ASAMI MAKURA
※3 米IT調査会社のガートナーが提唱した考え方。安全・安心・信頼性を重視する「守りのIT」(モードワン)と、機動性や柔軟性を重視する「攻めのIT」(モードツー)を両立し、場面に応じて使い分けていく方法を意味する。
 

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