感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』では、「期待」「不安」「選択」「好意」「悪意」「女王」「迷い」「決意」という8つの物語を通じて、多くの人が抱えがちな不安や悩みの解決法を説く。この自身初の小説の刊行を記念し、小説を書くに至った経緯や物語に込めた思い、作品に出てくる珠玉の言葉の一部などをお届けする。
精神科医の仕事は薬物療法
アテクシはTwitterでお悩み相談をすることが多く、「1秒シリーズ」のような本も出しているので、「精神科医は人生の悩みに応えるのが仕事」みたいに思われることがよくあります。
でも、それは本来、精神科医ではなくカウンセリングや心理学がフォローする領域です。
精神科医の仕事は脳の機能の異常を薬で治すこと。
「薬物療法もある」じゃなくて、薬物療法こそが精神科医の仕事なんです。
脳は神経伝達物質がいっぱい絡み、いろんな感情や思考を司っているわけですが、うつ病や統合失調症になると、なんらかの理由でいくつかの物質が足りなくなったり、多過ぎたりすることになります。
精神科医はそこを見抜き、調整するための薬を適切に処方し、機能を修正してあげることが一番大事です。
悩みがいくら深くても、脳の機能に異常をきたしていなければ、本来は精神科医が扱うべき問題ではありません。
ただ、患者さんの治療は長期に及ぶことが多く、不安や悩みを抱えた患者さんから個人的に相談を受ける機会は、当然起こりえます。
そのとき「こういうふうにしたら?」「こういう考え方をするとラクですよ」とアドバイスすることはあるわけです。
精神科医がTwitterや書籍を書く意味
もっとも、アテクシの場合、忙しいときには1日に100人以上の患者さんを診察することもあります。
1人5分程度の時間しかとれませんし、患者さんの状態の確認と薬の調整だけで精一杯です。
とても一人ひとりとじっくりコミュニケーションをとっている余裕はありません。
また、診察をしていると同じような悩みを抱えた患者さんも多く、別の患者さんに同じような内容を話すこともしばしばです。
それなら先に文章として公開し、必要な人に届けたほうが効率的ですし、診察に来ない人にもリーチできます。
そういった理由もあって、Twitterや書籍などを通じて情報を発信しているわけです。
もちろんアテクシ初の小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』も、読者のみなさんの悩みに寄り添うためのメッセージとして書きました。
ただ、最近は本を読んだ読者の方々から「直接診察を受けたい」「お会いして悩みを相談したい」とご要望をいただく機会も増えてきました。
そこで、そういう場所を提供できたらいいなと考えており、現在、具体的に準備を進めているところです。
(構成:渡辺稔大)