短期的な株価の動きは
「酔っ払いの千鳥足」と同じ

 その理由は短期トレードには再現性がないからだ。1999年に出版された『ウォール街のランダムウォーカー」(バートン・マルキール著)という本がある。これは個人投資家のバイブルと言ってよい名著で、一般の個人投資家にとっては、とても参考になることがたくさん書いてある。

 この本のタイトルに使われている「ランダムウォーカー」という言葉は酔っ払いのように千鳥足であっちこっちへふらついて行方の定まらない動き方をする人のことを指す。この本の中で著者は株価の短期的な動きはまさに「ランダムウォーク」で、どちらを向くかわからない、ということを言っているのだ。

 つまり短期的な株価の動きは全く予想できないと言い切っている。でもこれは考えてみると当然だ。

 イギリスの経済学者ケインズは「株価は美人投票のようなものだ」と言ったが、ここで言う美人投票というのは「自分が美人だと思う人に投票する」のではなく、「誰が美人コンテストで優勝するか」を当てるということを指す。

 すなわち一番多くの人が美人だと思った人を当てる、ということであるから、自分の主観は関係ない。他の人がどう思っているかを当てるわけだ。つまり人がどう思うかを洞察し、読まなければならない。だからこそ、それを予測するのは困難なのである。

 もちろん何百万人もいる投資家の中には、天才的な能力で短期的な株価の動きを洞察し、短期売買で利益を挙げ続けている人も全くいないわけではないが、恐らくそういう人は数万人に一人だろうから、どうしても「再現性」という点では難がある。

 したがって、普通の人が株式投資で資産形成をするにあたって最も再現性があり、かつ高い実績を上げ得るのは(2)の成長株の長期保有だろう。現実に株式投資で資産を作った人たちで最も多くの成功事例は、このパターンだ。