今回の自民党総裁選挙において候補者の政策論争はなかなか面白かった。ただその中で河野太郎氏の年金改革案は、「もう20年以上も前から議論され、既に決着のついている議論なのになぜ、今頃になってこんな話が出てきたのだろうか?」という不思議な感覚に見舞われた。ところがこれは政治家だけではなく、多くの経済評論家や優秀な金融マンの多くが年金に対して誤解している部分があるので、ある程度は仕方のないことだと思っている。
多くの優秀な金融マンが年金を誤解する最も大きな理由、それは「公的年金の本質は保険」だということが根本的にわかっていないからだろう。彼らは投資については非常に優れたファイナンス脳を持っているが、保険のことはあまりよくわかっていないことが多い。
しかしながら、投資と保険は全くその構造が異なる。投資で大事なことは投資した金額とそれに対して得られるリターンである。ところが保険の場合は、負担と給付のバランスを考えることが大事だ。さらに言えば給付が発生する場合の確率とその金額を数理計算で弾き出した上で負担を考えるわけなので、ある意味、投資とは正反対の発想法で考えていかなければならない。優秀なファイナンス脳を持った人にとって、ここが誤解しがちな点であろう。