商品相場が過熱感なき上昇を続けている。原油相場の代表的指標であるウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)は6月5日に約半年ぶりに1バレル=70ドル台を回復。金相場も昨年3月の最高値1オンス=1014.6ドルには及ばないものの、6月3日に一時990.3ドルを付け、1000ドルの大台をうかがう勢いだ。

 一方で、「相場に熱がない」(岩永弘一・住友商事金融事業本部コモディティビジネス部長)との声が関係者から漏れてくる。出来高がふくらんでいないのだ。WTI全体の出来高も100万枚を超えることはなく、5月以降相場が上昇トレンドに入った後も40万~60万枚の低水準で推移している。

 リーマンショック以降、ヘッジファンドなどの非実需の投資家はリスク回避志向を強め、商品をはじめとするリスク資産からいっせいに資金を引き揚げた。

 春先以降、主要国経済の底打ちを示唆する指標が増える一方、主要中央銀行が大幅な金融緩和を継続中とあって、「投資家がインフレの予感を抱き始めた」(近藤雅世・フィスココモディティー社長)。

 そこで、平常時並みに商品への投資を戻し始めた、というのが投資家サイドの実情だ。ニューヨーク商品取引所のWTIの非実需の買いポジションを見ると、4月28日の17万4308枚を底に6月2日には19万9497枚にまで増加しているが、売買は低調なまま。要は保有し続ける投資家が多く、積極的にリスクを取りにいっている気配はない。

 平時の水準に投資割合を戻すだけで終わるなら、上昇基調は長く続かない。実需が今後の動向の鍵となるが、その実需は依然、心もとない。主要国経済は底を打ったとしても、原油をはじめとして需要の水準は低く、在庫はだぶついている。たとえば、米国の原油在庫は5月末で3659億バレルと、前年の同時期に比べ600億バレル高い水準で推移している。商品相場の一段高が世界経済の撹乱要因となる公算は、当面小さそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)