日本だけでなく、アジア全域で成功した

 この『全裸監督』の成功を、ネットフリックス自身も「日本のみならずアジア全域でも成功を収めている」と評価している。海外のメディアもこぞってネットフリックスによる多言語シリーズの成功例のひとつとして報じた。辛口評価で知られる米国のレヴューサイト「Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)」では、シーズン1の公開後、肯定的レビューが98パーセントという高評価を得たほどだ。ユーザーの評価に目を向けると、「これは日本版『ブレイキング・バッド』だ」「シーズン1全8話を一気見した」など、好意的なコメントが並んでいる。

ネットフリックスのオリジナル作品は世界中で公開されるため、言語圏に合わせたタイトルが付けられる。『全裸監督』の場合はネットフリックスのオリジナル作品は世界中で公開されるため、言語圏に合わせたタイトルが付けられる。『全裸監督』の場合は“THE NAKED DIRECTOR”“AV帝王”などのタイトルが付いた Photo:NETFLIX

 そして、コロナ禍の中で撮影が進められたシーズン2は、2021年6月24日に全世界同時配信された。昭和が終わる80年代の最後の年である1989年でエンディングを迎えたシーズン1から続き、シーズン2の舞台は1990年代に突入。その時代を象徴する日本のバブル崩壊と同時に転落していく村西とおるの姿から、人生観を問う濃厚な人間ドラマが描かれている。地に堕ち、全てを失った村西とおるが最終的に得たものは何だったのか。残りの8話でその答えを導いていった。エロティシズムからもビジネス視点からも日本の美学が見えてくる作品が全16話で完結してしまうのはもったいない気もするが、これも引き際の潔さと捉えている。