後継者育成の方法は
時代に応じて変化する
中小企業の後継者難は社会的に大きな課題になっているが、実際には後継者が決まっている企業も多い。昔からよく行われてきたのは、後継者は学校を卒業したら、仕入れ先、販売先もしくはエリアの異なる同業他社など関係の深い企業に頼んで、数年間修業させてもらうことだった。だが、結論から言えば、これは適切な方法ではない。
昭和期のように、各業界のビジネス内容が固定的で、業務のノウハウも確立されている時代には、取引ネットワークの中に身を置き、人脈を広げ、製造や販売の勘所を吸収して自社に持ち帰ることに意味があった。しかし、業界というものがすでに融解している現代において、この方法はビジネスに対する視野を狭めてしまう。若い人たちにとって、狭い業界の中で過去の郷愁に包まれた人たちと共に過ごすことは、時間の無駄どころか悪影響が生じる。家業のことは一切忘れて、数年間を異業種の中で濃厚に過ごす方が柔軟な発想の土台になる。