生物学などの科学では、数百年以上もかけてこれら四つの分析が学問として定義され、未知の極みとも言える多くの自然現象が解明されました。だからお気づきかもしれませんが、これらの観点に「学」をつければ、それぞれが立派な生物学のジャンルになっています。現在の経済学や社会学などの観察手法は、古来の生物学の影響を強く受けているのですから、分析の種類が共通しているのも当然なのです。

解剖(内部)
内部の構造を観るための観点。形態学・解剖生理学・発生学的な観点で、内部に秘められた機能や作られ方を理解することで、モノがすでに備えている可能性を発見する。

系統(過去)
過去からの影響や文脈を観るための観点。そのものがどんな経緯をたどって、どう進化を遂げてきたか。その進化図を描き、過去から私たちがどう影響を受けたのかを探る。

生態(外部)
外部との関係を想像する観点。動物行動学で生態系を俯瞰する方法によって、周囲の人やモノの関係性を探り、マクロなシステムとしての構造を発見する。

予測(未来)
未来を明確かつ希望あるものとして想像するための観点。データから導き出すフォアキャストと、未来にゴールを設定するバックキャストによって、未来を現実に近づける。
(進化思考 P210から)

 いざこうして四つを並べると、「なんだそんなことか」と思うかもしれません。実際に私たちは、全員が創造力を発揮する時に四つの観察を無意識に実践しています。しかし、なぜ私たちはこのシンプルな探求の構造を、一度も学校で習ったことがないのでしょう。

 また創造的な人は極めて意識的に、これらの観察力を発揮していることにも気づきます。大人になるまでに、こうした「未知を理解する方法」の一つ一つに偶然出会えた人と出会えなかった人の間には、強烈な創造的格差が生まれてしまっている可能性もあります。つまりこの四つの観点は、現在の教育が忘れてしまった本質的な観察の手法なのです。