【2】仕事のスケール、優秀な先輩、使用可能なネットワークの魅力が低下

 大企業に勤めている良さは、大きなスケールの仕事ができる。優秀な先輩後輩と仕事ができることによるビジネス能力の獲得、会社の持つ人的ネットワーク(社外人脈も含む)の利用などであり、これはいまだに大きな魅力の一つとはいえるだろう。ただ、これも自分がたまたまそのような仕事に運よく携わることができ、かつ上司などに信頼され、思い切って仕事を任せられた場合に初めて獲得できるものである。こうなるためには、やはり10年、15年と時間を経る必要があるし、運も相当影響する。

 一方で、ベンチャー企業の場合、最近はベンチャーキャピタルの支援などもあり、短い期間で上場企業になることもある。資金の獲得に応じて、有名大企業ほどではなくても、仕事のスケール、優秀な取引先の人材、使用可能なネットワークも広がってくる。そして、このような会社では、優秀な幹部人材が不足しているから、大企業よりも高い確率で自分が中心となって仕事ができる。となると、もちろん会社にもよるが、この点に関しても大企業の相対的な魅力は低下しているといえる。

【3】有名企業を辞める抑止力はない

 大企業に勤めていると、辞めたらダメと、親や配偶者からブロックを受ける可能性はある。しかしながら、親や配偶者が世の中の動きに明るければ、有名大企業に居続けるメリットがたいして大きくないことに気付いている。それに大卒社員は、もともと3年で3割は辞めるのだ。特に今の時代は辞めたからといって誰も不思議に思わないし、社会から変人扱いされることもない。大企業を辞める抑止力はもうほとんどない。

【4】良い会社との出合いもある

 そうはいっても、良い働き先の候補が見つからなければ転職できない。ところが、今は時代の大転換期だから、面白そうな会社はいくらでもある。若手に対しては、転職支援会社はいくらでも企業を紹介してくれるし、それらの求人情報はSNSで拡散される。リファラル採用なども広がっているし、活動的で他社と触れ合う機会の多い者やアンテナが周囲に張り巡らされているような若手であればいとも簡単に面白そうな会社を見つけることはできるし、声もかかりやすい。そういう状況下にあっては社員の囲い込みはできようもない。

 以上のような理由で着眼点が優れている、行動範囲が広い、面白い活動をしている、といった人であれば、経済面、仕事面、社会面いろんな観点から見ても、いつ辞めてもおかしくない状況にあるといえそうだ。

 さて、先ほどの会合では、話の続きがあった。「ところで、離職を防ぐ手だては何かやっているのか?昔は通過儀礼の儀式があり、そこで仲間意識と帰属意識を高めて、他に変わろうなんて思わせないようにしたぞ」「今は会社にいる意味などを高める努力が足りてないんじゃないか、だから辞めるんだ」。