なぜ優秀人材の離職を引き留めることは逆効果なのか
優秀な社員の離職に悩む企業は少なくない Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。

キーパーソンに突然辞められるのを防ぐには

 私は、30歳の時に転職を経験している。

 転職の理由は、新規事業を立ち上げるベンチャーへの参画だ。特段、職場や仕事に不満があったわけではない。そのベンチャーがやろうとしていることが、当時、自分がやりがいを感じながら取り組んでいた分野の新規事業だったのだ。

 つまり、自らの「働きがい」をさらに感じながら自分を高められるチャンスに巡り合い、そこに飛び込んでいったかたちだ。

 転職先のベンチャーでは、数人規模の小さな組織から、1000人以上の大組織になるまでの成長を経験できた。

 最終的には、役員を務めさせてもらった。事業を拡張し、会社を大きくするのは、もちろん大変だった。しかし、それ以上に苦労したのは、複雑になっていく「組織と人」の問題への対処だった。
 
 私自身がその会社の経営から離れたのは10年ほど前だ。会社はその後も成長を続けているので、おそらく組織と人の運営は、さらに難しくなっていることだろう。

 また、一緒に働いていた役員たちのほとんどは、今でも残って頑張っている。だが、次世代を担うべき人材が、「上が詰まっているから」という理由で離職したりしていないか、老婆心ながら心配でもある。