必要な国際ルールの策定
岸田政権はエネルギー転換を急げ

 カーボン・クレジット市場のゆがみは是正されなければならない。必要なのは、国際ルールの統一だ。

 航空業界のクレジット取引の場合、本来なら第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)がルールを定めるはずだった。だが、参加国の意見対立によって実現せず、結果的に、多種多様な認証基準に基づくカーボン・クレジット取引が急増した。その後、環境政策を重視する欧州委員会は脱炭素関連のルール策定を加速して国際世論の主導を狙っているが、COP26でもカーボン・プライシングや途上国支援をめぐり各国意見は食い違った。

 わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない。エネルギー政策転換に関しては、太陽光と風力を用いた発電を増やすことが必要だ。足もとでは総合商社が再生エネルギー関連事業を強化しており、そうした取り組みを支援する意義は大きい。

 国際ルール策定に関しては、米国との連携強化と並行して、東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべきだ。それはわが国の脱炭素関連技術を支持し、見解に賛同する国が増加することにつながる。

 そうした取り組みを進めることができないと、わが国は脱炭素に遅れる。その結果として、他の国や地域が主導したルールに受動的に対応せざるを得なくなる。国際ルール策定で主導権を取れなければ、本邦企業の競争力は低下し、経済にはマイナスの影響が及ぶだろう。

 国際世論の意思決定は多数決のロジックに基づく。わが国は国際的に支持を得られ、なおかつ地球温暖化問題の改善に資する脱炭素の技術規格、カーボン・プライシングのルールなどを世界に明示し、より多くの賛同を得る必要がある。そのために岸田政権はエネルギー政策の転換を急ぎ、わが国の脱炭素技術などの優位性を世界に示さなければならない。