GAFAが持っていない
日本が得意とするハードウエア技術

 話を今後の技術のアップデートに戻すと、日本の22~28nmプロセスの工場誘致は、今必要な価値獲得のための戦略である。今後、日本がより高度な半導体生産に乗り出さなくてよいかといえば、そうではない。しかし、いきなり5nmで米国と張り合うことも意味はない。もう少し具体的にいえば、日本はGAFAに追い付き、追い越そうとする必要はないのかもしれない。これからは自動運転技術などで、AI技術が重要になる。そのためには、最先端の半導体プロセスが必要になることは明らかである。

 しかし、米国には軍事産業という最先端技術に莫大な投資をできる産業があり、潤沢な資金を基に莫大な研究開発と設備投資を行った技術を民間転用して、GAFAのような民需企業が活用することができる。防衛予算が抑制的な日本で、同じビジネスモデルを行うことはできない。

 ビジネスは精神論だけでは戦えない。それは第二次世界大戦で日本が負けたのと同じパターンだ。世の中はこれまでのように、各国の企業がクローズドに、垂直統合的に技術を囲い込んで製品を開発する時代ではない。日米のIT産業、エレクトロニクス産業、あるいは自動車産業も、張り合いながらも協調することができるし、そうしたオープンな環境でのイノベーションが不可欠だ。

 戦略の基本は、競争相手がいない市場で自身の強みが生かせることである。GAFAを代表とするIT企業が今後、自動車のAIなどの技術で先に進んだとしても、彼らにも持っていないものがある。それはハードウエアだ。

 1980年代に最も激しかった日米貿易摩擦を経て、米国はそれまでの主力産業であった自動車、エレクトロニクスという製造業から、サービスやソフトウエアに産業の主軸を移している。しかし依然として、サービスやソフトウエアを実装するハードウエアは必要である。アップルが自動車を作りたくても、アップルだけでハードウエアを作ることはできない。そもそも、アップルはPCやスマートフォンですら、ハードウエアは自社で生産しておらず、台湾企業の中国工場で作っている。