コロナ禍でも好業績のソニーに
日本企業の「底力」を垣間見た
8月4日にソニーとトヨタの決算発表があり、ソニーの2021年4~6月期連結決算は、売上高が前年同期比15.0%増の2兆2568億円、純利益が9.4%増の2118億円、トヨタは72.5%増の7兆9355億円、純利益が約5.7倍の8978億円となり、トヨタは同四半期の過去最高業績となった。
ソニーとトヨタの好業績は、日本の製造業の底力を感じさせるニュースといえるかもしれない。古くから日本企業は、オイルショックや度重なる震災など、企業経営や生産に大きな影響が出る数々のアクシデントに見舞われてきたが、その都度困難を乗り越え、より強靱な経営や生産のシステムを構築してきた。
ソニーはオイルショックで燃料費が高騰したときに、当時の主力製品であったブラウン管の生産に大量に使うエネルギーを大幅に削減する生産技術を開発し、オイルショックを乗り切っただけでなく、長期的なブラウン管製造のコストダウンを実現した。2011年の東日本大震災では、宮城県の報道用ビデオカメラのテープの工場が甚大な被害を受けたが、当時の中鉢良治副会長の陣頭指揮の下で早期の生産再開を果たし、世界の放送局へのテープ供給に支障を来たさなかった。
昨今のコロナ禍では、テレビなどの巣ごもり需要は高かったとはいえ、家電、自動車ともにサプライチェーンの混乱や昨今の半導体不足などのアクシデントがあり、それに加えて経済の先行きの見えない不安感に不安定な需要、人の移動が制限される中での業務遂行など、企業にとっては様々なマイナス要素が存在していた。しかし、その中でも好業績を出せる日本企業の底力には、危機に強い日本の産業の特徴が表れているのかもしれない。
米国や中国は、仕事を明確に分業して他者の仕事には口を出さない、組合せ型、モジュラー型の製品開発や組織運営を強みにしてきた。一方、日本は組み合わせに対してすり合わせ、インテグラル型のものづくりが特徴といわれていて、トヨタの多能工に代表されるように、分業しながらも他の人の仕事にも関与したり協力しあったり、お互いがお互いの仕事に口を出し助ける文化が、日本のものづくりの現場にはある。